交通事故の後遺障害逸失利益~事故前の収入が低いが,今後増収が見込める場合~
事故により後遺障害が残存した場合、後遺障害による逸失利益(事故がなければ本来得られていたはずの収入)の計算にあたっては、事故前の実際の収入を基礎とするのが基本です。
しかし、事故時点での収入が低額であっても、将来の収入増加が見込める場合、事故前の収入を水準とすることが不平等となる場合があります。
典型例としては、
①若年労働者(おおよそ30歳未満)の場合や、
②事業を開始した直後のため収入が低水準に留まっている場合です。
このような場合、被害者に、将来的に全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には、全年齢平均賃金をベースに逸失利益を計算することが認められています。
もっとも、全年齢平均賃金が認められるためには、この将来の収入増加の見込みについて、具体的に根拠を示す必要があります。このためには、適切に資料を収集し、事情を多角的に検討することが不可欠となります。
将来の収入増加の根拠の説明の可能性の一つの目安として、事故前の実収入額と「年齢別」の平均賃金額とにどの程度の差があるかが問題となります。
ここで、「年齢別」平均賃金程度の収入を得ていたのであれば、将来的にも各年代の平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が高いと判断され、全年齢平均賃金が認められやすくなります。
また、年齢別平均賃金よりも実収入が低い場合でも、当然に収入上昇の可能性が否定されるのではなく、事故前の収入が低い理由や将来の展望を具体的に検討し、収入増加の根拠を探ることになります。例えば、開業直後で、開業費用が多くかかっていたために一時的に所得が減少している場合であれば、翌年以降は経費が減少するため、ある程度の収入増加を見込むことができます。
基礎収入として、全年齢平均賃金が認められれば、逸失利益は大きく上昇します。
ですので,後遺障害を負った方は一度弁護士に相談されることをお勧めします。