交通事故での後遺障害申請前に傷害部分のみの先行示談について
傷害部分とは、交通事故日から症状固定日までの傷害による損害(治療費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料・文書料など)のことをいいます。
後遺障害による損害(将来の介護料・逸失利益・後遺傷害慰謝料など)と区別して使われています。
1 傷害部分のみの先行示談は可能か
保険会社次第で可能な場合があります。
傷害部分だけ先に示談しても、後遺障害分の損害について示談したことにはなりません。
ただし、示談書を書く際、示談文言に「その余の請求は放棄する」や「ほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する」という文言は入れないようにしましょう。
入れる場合には「示談の対象が傷害部分であることがはっきりわかる」か、「後遺障害が発生したら別途協議する」ような文言にしておくべきです。
2 先行示談をすべきか
お勧めはできません。理由は2点。
まずは,先行示談を希望するということはお金に困っていることを保険会社に示してしまうことであり,足元を見られるリスクがあります。そして,たとえば,後遺障害14級のむちうちは他覚所見があると評価されなくとも認定されることはありますが,仮に異議申立により他覚所見があり12級相当とされるケースは存在します。
しかし,他覚所見があると評価されない又は非該当のむちうちの場合は別表Ⅱといって弁護士基準でも相対的に低い通院慰謝料の基準になってしまいます。
他覚所見があるから12級と認定されたむちうちについては別表Ⅰと相対的に高額な慰謝料の基準になります。つまり,先行示談をするということは,別表Ⅰで請求できる機会があったのに別表Ⅱという低い基準で和解せざるをえないことを意味しています。
ですので,基本的には先行示談はお勧めしませんが,真に生活に困窮をしているのであれば仕方がないとは思います。