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交通事故での主婦業の休業損害

1 主婦の休業損害

性別・年齢を問わず、現に家族のために家事労働に従事する者を「家事従事者」と言います。

家事従事者の逸失利益性について、最高裁昭和49年7月19日判決は、家事労働による経済的利益を認め、家事労働者に女性平均賃金に相当する財産上の利益を上げるものと推定するのが適当である、と判断しました。

これ以降、家事従事者の家事労働が金銭的に評価できることは、ほぼ確定した考え方となっています。よって,主婦業の方が交通事故に遭った場合,休業損害を請求できる余地があります。

なお、家事労働は「家族のため」にする必要があり、一人暮らしの家事の場合は自ら生活していくための日常的活動であり、金銭的に評価はされません。

 

保険会社は1日当たり5700円で主婦の休業損害を算定するところ,裁判基準では原則として女性全年齢女性平均賃金の約350万円の日割り金額である約9500円で休業損害を算定していくことをまず検討します。このように,弁護士に依頼すれば主婦の方については休業損害が増額する可能性があります。

もっとも,原則、女性全年齢平均賃金が採用されると言いましたが、「特段の事情」が認められる場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額するとされています。

ここでいう「特段の事情」とは、家事従事者の年齢・家族構成・身体状況及び家事労働の内容を考慮して、生涯を通じて平均賃金相当の労働を行いうる蓋然性が認められない場合をいいます。

実務では、交通事故の賠償において,被害者の方の年齢・家事内容等から、家事従事者の基礎収入が争われます。

 

 

2 男性が主夫業をしている場合

性別を問わず、家族のために家事労働をしていれば、家事従事者に当たります。よって,いわゆる主夫についても交通事故に遭った場合には休業損害を請求できる余地があります。

ここでいう家事労働は一時的な手伝いでは足りず、家事を継続的に行なっている必要があります。

共働きで家事を分担している場合などは、分担する家事の内容に応じて基礎収入が認定されます。

男性の家事従事者の場合にも、基礎収入額は男性平均賃金ではなく、女性平均賃金を参考として認定されます。

ただし、現在でも男性が中心となって家事を行なっている例は多くはないことから、保険会社は容易には男性の家事従事者性を認めず、強く争ってくる傾向にあります。

このため被害者側としては、家族構成・家事の分担・生活状況・就労状況・扶養関係等の具体的・個別的事情を明らかにし、実際に被害者が家事を取り仕切っていることを主張・立証していく必要があります。

 

 

3 高齢者が同居人のために主婦業をしている場合

年齢を問わず、実際に家族のために家事労働をしていれば家事従事者に当たります。

ただし高齢者の場合、家事労働の程度が軽いことが多いですので、一般に年齢別平均賃金が採用され、かなり高齢の方については平均賃金を何割か減額した額が採用される傾向にあります。

もちろん高齢者の方でも、若い主婦と同様に家事全般を取り仕切っている方もいらっしゃいますので、年齢だけで一律に減額されるわけではありません。

被害者側としては、被害者の年齢・健康状態・家族構成・家事の分担状況・家事内容及び分量等の具体的事情を主張し、妥当な家事労働の評価を主張することになります。

 

 

4 別居の家族のための家事労働

家事労働は「家族のため」にする必要がありますので、一人暮らしの家事の場合は自ら生活していくための日常的活動であり、金銭的には評価されないのが原則です。

もっとも、別居の家族を介護している場合など、時々の手伝いではなく、継続的に家事を行なっている場合であれば、家事労働として認められる場合があります。

 

 

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